電脳網千句第9 賦白何百韻 進行表 2019.2.1〜

1折表     
001         1   雪吊や六義(むくさ)の苑の澪つくし  如月 冬 雪は降物(雪は4句物、「雪吊」と熟語になので、4句の外) 数字 苑(園)は居所 澪つくしは水路標識なので水辺用) 
002         2   春立ちぬれどなほ年の内        楽歳  冬 年内立春は連歌冬の季
003         3  曳かれゆく車はかろき音をもちて   梢風  雑
004         4   うたあはせとて身なり整へ       蘭舎  雑 「身なり」も身体のうち
005         5   畳(たた)なはる山を清めし初あらし  羽衣  秋 初嵐は吹物 山類
006         6   険しき径に谷紅葉追ふ   夢梯  秋 紅葉は3句物(只1、梅桜などに1、草紅葉1)谷は山類体
007         7  雲晴れて月をしるべに頼りたき     遊香  秋 月 光物 夜分 聳物
008         8 ほとほとと戸を叩く旅人         朝姫  雑 旅 居所体 人倫 
1折裏     
009         1   書きぶりの美しき真名手習へる   千草  雑
010         2  いと賢しげに結ぶ口元          如月  雑 身体
011         3   陽は西に扇をかざす夏衣       楽歳  夏 光物 衣類
012         4  銘をつけよとたまはりし鉢       梢風  雑 「銘」メイは字音、字訓は「しるす・きざむ」。「鉢」は字音、字訓とも「はち」 
013         5   よろこぶもなげくもいつか時すぎて  蘭舎  雑
014         6   松の千年をよぎる花びら        羽衣   春 花 木類
015         7   入り江より眺むる富士の薄霞      蘭舎  春 聳物 水辺 山類 名所
016         8   暦めくりて新しき春            遊香   春
017         9   触れ待ちて心なぎたる振りもせで    朝姫  雑 恋
018         10   惜しくもあらぬ文殻の数         千草   雑 恋 文は3句物(只1、恋1、旅1)
019         11   おとなひし庵の主の臈長けて      如月   雑 居所体 人倫 
020         12   そのもてなしのまつむしのこゑ      楽歳  秋 まつむしは1句物、虫類
021         13   ゆくりなく風にすすきの渦生れぬ   梢風  秋 すすき(薄)は3句物(只1、尾花1、すぐろ・ほやなど1) 風は吹物 
022         14   平らな原に月のいざよひ  蘭舎  秋 月 光物 夜分 原は地儀
 2折表    
023         1   戦慄てあづま路くだる都びと     羽衣   雑 旅 人倫 都は国郡、3句物(只1、名所1、旅1
024         2   蛇(へみ)の出づるや於爾の現るゝや  夢梯  雑 蛇は連歌では虫類 鬼は1句物
025         3   岩かげに打ち捨てられし鈴ひとつ    遊香  雑 岩は地儀 
026         4  ひなの里みにかずら橋揺れ       朝姫 雑 居所(里) 橋は5句物(只1、御階1、梯1、名所1、浮橋1)鄙びた里近くのかずら橋なので、この橋は名所の橋。谷が山類なので、橋は山類用の可能性があり、また『連珠合璧集』は橋を水辺に指定。かずらは「かづら」が古式ですが、祖谷渓では「かずら橋」と表記 
027         5  山の音ふと止み髪のかぐはしき     千草   雑 山類体 人体 
028         6  時雨の先に根の国の坂          如月  冬 降物(時雨は2句物、秋1、冬1) 根の国は黄泉の国のことで、国郡には当たらず、哀傷。坂は山類体。 
029         7   榾の火に語部もまた揺らぎけり  楽歳   冬 榾は燃料なので非木類 人倫
030         8  あやかしの子はあやかしとなる      梢風   雑
031         9  携へしふくべをみたす甘き酒        蘭舎  雑 飲食 
032         10  夢見心地のとろりとろりと         羽衣   雑 この夢は非夜分
033         11 若草の薫るいのちに枕して        夢梯  春 旅 草類 いのち(命)は2句もの(只1、虫の命など1)  
034         12  はや遠のきし雉子の鳴き声        遊香  春 鳥類  
035         13  逢ひがたき君の面影おぼろ月      朝姫   春 月 光物 夜分 恋 面影は2句もの(只1、花月などに1) 人倫
036         14  佐保姫を描く筆の絵すがた        千草   春
 2折裏    
037         1 田の神の坐(ましま)す水辺幤きよく   如月   雑 神祇 田と田は7句 田は地儀 水辺は水辺体
038         2   笛に太鼓に歌ぞながるる       楽歳  雑
039         3  ねんごろなまうけ調ふおん館      梢風   雑 館は居所体
040         4  雲のはたてに何ながむらむ      蘭舎  雑 聳物 
041         5  花かつみ旅の翁の道連れは     羽衣   夏 花かつみ(夏の水辺の草)草類 旅 人倫
042         6  笈に檜の笠杖に矢立も         夢梯  雑 旅 
043         7  重き荷を背負ひて馬のつぶやかず   遊香   馬(駒)は1句もの、獣類 
044          8  風に尋ぬる天地の声          朝姫  雑 吹物 天地は天象+地儀
045         9  月うけて忘扇は文殿に        千草   秋 月 光物 夜分 文殿は非居所
046         10  長き学びの夫に秋寂ぶ        如月  秋 述懐 人倫
047         11  大宮に霧たちこむる司召        楽歳   秋 司召 霧は聳物 大宮は九重や都と打越を嫌う
048         12  いつか定めの船に乗らばや    梢風  雑 船は水辺体用外、船と船は7句 
049         13  きのふよりけふみる花の色ふかし  蘭舎  春 花 木類 きのふ(昨日)は1句ものけふ(今日)は2句もの
050         14   小さきおゆびの先の弥生野     羽衣   春 弥生野は3月頃の野、野は地儀。
3折表     
051          1  さわらびのかさねもうれし乙女らに   夢梯  春 「さわらびのかさね」は春の色目 人倫  衣類
052          2  さえずりのごと撥ねし笑み声      遊香  春 
053          3   窓の外は樋つたふ雨のしきりなる  朝姫 雑 居所体  降物 
054         4   昔戦のありし川の名          千草  雑 昔は1句物 述懐 水辺体
055         5   侘助のうつむき咲ける御寺内     如月 冬 釈教 木類 
056         6   僧登り来る坂の底冷え         楽歳  冬 釈教 人倫 
057         7   読まぬまま文を返すもくちをしく    梢風   雑 文は3句物(恋1、旅1、文学1)恋の文は1折裏10に既出。文学の文は2折裏9に「文殿」があって、既出感強し。残るは旅の文のみ
058         8   まつやとつげよ秋のはつ風       蘭舎  秋 恋(待つこころ) 吹物 
059         9  鏡なす月に今宵のうす化粧       羽衣 秋 月 光物 夜分 今宵の宵は非時分。恋 
060         10  過ぐる車に袖の露おく           夢梯 秋 恋 袖の露おく=袖の涙 袖は衣類 露は降物   
061         11  誰しもが煙と消える鳥辺山        楽歳 雑 哀傷 誰は人倫 煙は聳物 鳥辺山は名所・山類 
062         12 あへなきものと知れば愛しき      朝姫   雑 述懐
063         13   あると見るうつつも夢のうちとこそ   千草  雑 この夢は非夜分 夢と夢は7句
064         14   はつかに明し春雨の朝         如月   春雨は1句物、降物 朝は2句物(朝1、今朝1) 
 3折裏    
065          1   時くれば老木も花をひらかせて     楽歳  春 花 木類 老いは2句物(只1鳥木など1) 
066          2  笑ひのどかな雛の遊びに        梢風  春 のどかな鄙の遊び
067          3  はるかなるいくのの道に東風吹かば  蘭舎  春 東風(吹物) 「いくの」は地名・歌枕 
068          4  鳴神となる(り)大臣祀られ        羽衣   雑 鳴神は天象、連歌では夏でなく雑 人倫
069          5  とどろきにあらがふ身こそもののふと 夢梯    雑 人倫
070          6  諫むる顔の輝やかまほし        遊香   雑 人体
071          7  巻紙に戯るる猫嗜めて         朝姫  雑 獣類
072          8  ひるがへしゆく墨染の袖        千草  雑 述懐 衣類 
073          9  走り根のみち鞍馬より貴船へと    如月 雑 木類 地名・名所 
074         10  鳩ふく声のいづこともなく        楽歳   秋
075         11  この山の深さを知らぬ昼の月     梢風 秋 月 光物 時分(昼) 山類体 
076         12  黒塚らしき影のすさまじ         蘭舎  秋 すさまじ 黒塚は歌枕 
077         13  なにゆゑに若き血肉を欲りたまふ   羽衣   雑 
078         14  召されし君はつひに帰らず       夢梯 雑 君は人倫 
4折表     
079          1   つつがなく友と相みて語りたき     遊香  雑 人倫
080          2   煎じ物とて苦し苦しと          朝姫 雑 
081          3  薬玉の柱をたのむ起き臥しに     千草  夏 居所体 
082          4  夕星(づつ)触るるかはほりの舞    如月  夏 「かはほり」はおおざっぱに「生類」。ゆうづつ(金星)は光物・時分(夕) 
083          5  この島は南の海の果てにして     楽歳  雑 水辺体 山類   
084          6  すぎさりし日のよみがへる筥    梢風 雑 述懐 
085          7  うつくしき笛に誘はれ歩み出づ   蘭舎  雑 
086          8  律(りち)の調べを片待ちの松     羽衣  秋 恋 木類 
087          9  寝ね難き秋の百夜を過ごしける   夢梯  秋 恋 夜分 数字 
088         10 月も常より近く見えしを        遊香  秋 月 光物 夜分  
089         11  山裾の菊のかをりのただよひて  朝姫 秋 草類 山類
090         12   誰そ醸せるや大甕の酒       千草 雑 人倫 飲食物 
091        13   あまびえとふ絵札貼られし厨口  如月  雑 妖怪 居所体
092        14  嵐のさなか戸を敲く音        楽歳   雑 吹物 居所体
4折裏     
093         1   ほいとうの提げたる鉢のおほいさよ   梢風  雑 釈教 人倫
094         2  ただひたすらに法(のり)のためにぞ  蘭舎  雑 釈教 法は2句物仏法のほか法令
095         3   玉鬘見えざる糸に導かれ        羽衣  雑 釈教 玉鬘は華鬘のこと 人倫ととると打越になる
096         4   やがて微かに光射しくる         夢梯 雑 
097         5   巣ごもりを終へし翼の軽やかさ    遊香 春 鳥類 
098         6   陽のあたたかく歩む芝原        朝姫 春 陽は光物 草類 地儀
099         7  かへりくる春ごと花のあらたしき       千草
 春 花 木類 
100         8  謡(うた)にかしづく鼓うららか       如月   春