電脳千句第7 賦何水百韻 進行表 2016.10.24〜2017.11.6
1折表 | ||
001 1 | 秋風や雲うち払ひ山尖る 楽歳 | 秋 秋風は2句物(秋風1、秋の風1) 風は吹物 雲は聳物 山類体 |
002 2 | つるぎを照らす月はありあけ 羽衣 | 秋 月 光物 夜分 つるぎは山類体あるいは武器(雑物) |
003 3 | 文机にすすき一枝置かれゐて 路花 | 秋 すすき(草類 薄の類は3句物、薄1、尾花1、末黒・穂屋など1) 数字。 |
004 4 | 近づく冬の足音をきく 夢梯 | 秋 「近づく冬」で秋 季節の足音なので非人体 |
005 5 | ゆるらかに磯わたりゆく田鶴のこゑ 蘭舎 | 雑 鶴は2句物(鶴1、田鶴) 鳥類 磯は水辺体 |
006 6 | 水棹のしづく散らす潮々 千草 | 雑 水辺用(水棹)水辺体(潮) |
007 7 | つぶれ石並べて遊ぶ子らの居り 遊香 | 雑 地儀(石) 人倫 |
008 8 | 明けて涼しきるり色の空 梢風 | 夏 涼し 空は天象(3句去り) |
1折裏 | ||
009 1 | 大路ゆく網代車の物見窓 朝姫 | 雑 |
10 2 | 揺るるにまかす夢のあとさき 如月 | 雑 夢は夜分 夢と夢は7句去 |
11 3 | 契りきや花の舞ひ初むこぞの里 羽衣 | 春 花 木類 恋 述懐 居所体 |
12 4 | 思ひ募れば陽炎の燃ゆ 楽歳 | 春 恋 「陽炎燃ゆ」で春 |
13 5 | やはらかな牧を駆けゆく春の駒 夢梯 | 春 牧は野原と同じ地儀 駒(駒と言っても馬と言っても1句物)獣類 |
14 6 | 萌黄匂いの裾の揺らぎて 路花 | 雑 裾で衣類 |
15 7 | 折節はこころなきみも目を細め 千草 | 雑 人倫 人体 |
16 8 | 霧のしじまに盃を受く 蘭舎 | 秋 霧は聳物 |
17 9 | かたわれの月を迎ふる高館に 梢風 | 秋 月 光物 夜分。高館は平泉の衣川館のことで、名所 |
18 10 | 鳴くを忘れし虫のひと籠 遊香 | 秋 虫は1句物 数字 |
19 11 | 尼削ぎのみ髪(ぐし)傾げてをさな顔 如月 | 雑 人倫 人体 本説『枕草子』。 |
20 12 | あな麗しき水茎のあと 朝姫 | 雑 |
21 13 | 濃く薄く心のうちをうつしける 楽歳 | 雑 |
22 14 | つがはぬ鴛鴦をしのぶ独り寝 羽衣 | 冬 恋 鳥類 「独り寝」は恋の常套語で夜分 「しのぶ」述懐の匂い |
2折表 | ||
23 1 | 憂きことの重なるあした霜白く 路花 | 冬 降物(霜) 時分(あした) |
24 2 | 心づよきは老いの方人(かたうど) 夢梯 | 雑 老は2句物(只1、鳥木など1) 人倫 |
25 3 | 此の山を越えば信濃のつかまの湯 蘭舎 | 雑 山類 信濃・つかまは地名 つかまの湯は温泉で、温泉は水辺 |
26 4 | み寺のいらか若葉がくれに 千草 | 夏 若葉は木類 釈教(寺) 寺は非居所 |
27 5 | 連れ立ちてつつましげなる蝸牛 遊香 | 夏 虫類 |
28 6 | たはむれせんと生れ出づる世 梢風 | 雑 世は5句物(只1、浮世、世の中の間1、恋の世1、前世1、後世1) |
29 7 | たらちねの母の刺し子の麻の葉も 朝姫 | 雑 人倫 衣類 麻の葉は刺し子の模様、夏に非ず、草類に非ず |
30 8 | 片時去らず想ふよすがに 如月 | 雑 「想ふ」が使われているが、前句とのつながりにおいて、恋の句にあらず |
31 9 | 鮎落ちて京(みやこ)に近き皿の上 羽衣 | 秋 落ち鮎で魚類 みやこは国郡 |
32 10 | 訪(とぶら)ふ里の鶉鳴く宿 楽歳 | 秋 (鶉鳴く) 鳥類 里は居所体 ここの宿は旅のやど |
33 11 | 琵琶の音に誘はれ仰ぐのちの月 夢梯 | 秋 月 光物 夜分 |
34 12 | 揺らす人なき柴の戸の揺れ 路花 | 雑 人倫 居所体 柴の戸は非植物・非述懐 |
35 13 | うつし世にかなはぬ恋と知りながら 千草 | 雑 恋 世は5句物(只1、浮世、世の中の間1、恋の世1、前世1、後世1) 「うつし世」は「現世」で、浮世・世の中のこと。文脈から「恋の世」ととるのは困難 |
36 14 | なみだの川に架かる継ぎ橋 蘭舎 | 雑 恋 |
2折裏 | ||
37 1 | くたびれて寝ぬる合間を夕さりぬ 梢風 | 雑 時分(夕) 「寝」の字は4句物 |
38 2 | 事あり顔を見るも見ざるも 遊香 | 雑 人体 |
39 3 | まほらまの山辺のみち鐘かすみ 如月 | 春 「まほらま」は地儀にあたるのでしょうか。山の辺は山類 鐘は4句物(只1、入相1、釈教1、異名1) |
40 4 | 水温むころ旅立ちし人 朝姫 | 春 旅 水は水辺用 人倫 |
41 5 | 墨染めに花のひとひら舞ひおちて 楽歳 | 春 花 木類 墨染めは釈教 衣類 |
42 6 | 夢のまにまに蝶のたはぶれ 羽衣 | 春 蝶は虫類 胡蝶と夢の組み合わせは非夜分 |
43 7 | 髪さげし乙女子の声はんなりと 路花 | 雑 髪は人体 乙女子は巫女あるいは少女(人倫) |
44 8 | 撫で育てしを奪ひゆくきみ 夢梯 | 雑 人倫 |
45 9 | 常夏にたゞ隔てじと慣へども 蘭舎 | 夏 草類 |
46 10 | あけやすき夜の月はいづちに 千草 | 夏 月 光物 夜分 |
47 11 | ひたひたと山の魑魅(すだま)の近づくや 遊香 | 雑 山類 魑魅は妖怪(鬼の類)で一句もの |
48 12 | いをなどを食ふ者のすさまじ 梢風 | 雑 「いを」は魚類、水辺用。 「食ふ者」で人倫。 |
49 13 | 外つ國の銀(しろがね)の匙磨きつつ 朝姫 | 雑 国郡 |
50 14 | 閼伽水汲める古渡りの椀(まり) 如月 | 雑 釈教(閼伽水汲む)水辺用 |
3折表 | ||
51 1 | 微かなる軍(いくさ)の声は風に乗り 羽衣 | 雑 風は吹物 |
52 2 | ひとのこころのやみのふかさよ 楽歳 | 雑 人倫 |
53 3 | やがてみな西の涯へと往くものを 夢梯 | 雑 |
54 4 | 声も細りし冬の蚊なれば 路花 | 冬 蚊は虫類 |
55 5 | 黒髪の冷たく重く寝もやらで 千草 | 冬 冷たく 恋 人体 夜分 |
56 6 | ぬば玉の夜の衣返しつ 蘭舎 | 雑 恋 夜分 衣類 |
57 7 | うたてしと起きて来る子のしらみぐさ 梢風 | 秋 人倫 草類 |
58 8 | 秋のいで湯に流すしがらみ 遊香 | 秋 水辺体 |
59 9 | 産土神の千木に遊べる昼の月 如月 | 秋 月 光物 昼時分 神祇(うぶすな) 千木は非居所 |
60 10 | かそけき音は光より生(あ)れ 朝姫 | 雑 光物 |
61 11 | 歌よみのあづま下りのつらねうた 楽歳 | 雑 旅 国郡 人倫 |
62 12 | 僅か(はつか)濁れるもてなしの酒 羽衣 | 雑 飲食 |
63 13 | 厨には菜を切る音のよくひびき 路花 | 雑 居所 菜は食材(飲食物) |
64 14 | 手毬つく子のすがた優しく 夢梯 | 春 人倫 |
3折裏 | ||
65 1 | 遠山に東風のたよりのとどくらん 蘭舎 | 春 東風は吹物 山類 |
66 2 | おびただしくも青柳の糸 千草 | 春 木類 柳は3句物(只1、青柳1、秋冬の間に1) |
67 3 | すいすいと飛べる燕のうらやまし 遊香 | 春 燕は鳥類 |
68 4 | などて翁は籠を作るや 梢風 | 雑 人倫 |
69 5 | 忘れ得ぬ薫り残りし玉手箱 朝姫 | 雑 |
70 6 | ほのと紅色てのひらの貝 如月 | 雑 人体 貝類・水辺用 |
71 7 | しらじらと明くる月夜のかたみとは 羽衣 | 秋 月 光物 夜分 |
72 8 | またの逢瀬を契る七夕 楽歳 | 秋 恋 七夕は夜分 |
73 9 | ひとり居の宿に侘しき遠砧 夢梯 | 秋 砧は1句物 宿は居所 数字・人倫 |
74 10 | やすらふうちに時は過ぎ行き 楽歳 | 雑 |
75 11 | 物語書きはじめむと紙と筆 千草 | 雑 |
76 12 | あくがれあかす花のあだし野 蘭舎 | 春 花 木類 あだし野は地名(名所に非ず) |
77 13 | みやこより流行り始める春着あり 梢風 | 春 みやこ(都)は3句物(只1、名所1、旅1) 国郡 衣類 |
78 14 | 鄙の弥生に何ぞ求めむ 遊香 | 春 弥生は時節 鄙は国郡 |
4折表 | ||
79 1 | 引鶴に絡繰り唐子逆立し 如月 | 春 引鶴は鳥類 鶴は2句物(鶴1、たづ1、田鶴は既出、鶴はこれで打ち止め) |
80 2 | かいやぐら消え雲の棚引く 朝姫 | 春 『連珠合璧集』によると虹は光物。これに倣えば光の屈折現象である蜃気楼も光物といえる。 雲は聳物 |
81 3 | この浦に漁り小舟を漕ぎ出して 楽歳 | 雑 浦・小舟で水辺体・体用外 |
82 4 | 糸たぐり寄す罪ぞかなしき 羽衣 | 雑 釈教(罪) 釣り糸で水辺体用外 |
83 5 | なにゆへか雑魚の命もいとほしく 路花 | 雑 魚は水辺体用外 命は一句物 |
84 6 | しわぶきひとつ冬空の下 夢梯 | 冬 冬空は天象 ひとつで数字 しはぶき(咳)は連歌では雑 |
85 7 | 凩の吹くもふかぬもうき名にて 蘭舎 | 冬 凩は吹物、木枯は1句物 恋(うき名) |
86 8 | ただ身すがらに慕ひ来ぬれば 千草 | 雑 恋 この「身」は身一つの「みすがら」なので、身体。 |
87 9 | いくたびの闇をくぐりて秋の月 楽歳 | 秋 月 光物 夜分 |
88 10 | まつりごとには稲の穂をつみ 梢風 | 秋 稲の穂は草類か? 神祇 |
89 11 | 小牡鹿の声聞く里の直会に 朝姫 | 秋 鹿は3句物(只1、鹿子1、すがる1)で獣類 里は居所 直会は神祇・飲食 |
90 12 | 色なき風のわたる平城山 如月 | 秋 吹物 地名 山類 |
91 13 | いにしへを知るは樟ばかりなり 羽衣 | 雑 いにしへ(古)は1句物、述懐。 木類 |
92 14 | 位捨つれば人も問ひ来ず 楽歳 | 雑 人倫 |
4折裏 | ||
93 1 | 冠や裃要らぬ嬉しさよ 夢梯 | 雑 衣類 |
94 2 | さても今宵は箏など聞きに 路花 | 雑 宵は非夜分、非時分 |
95 3 | つつがなく帰りきませと門口に 千草 | 雑 旅(句意) 門は居所体 |
96 4 | なごりの雲の行くもすずしき 蘭舎 | 夏 聳物 |
97 5 | 湧く水に胸の透きゆく時を得て 梢風 | 雑 湧く水は水辺用 胸は人体 |
98 6 | かずらの橋を揺らす春風 遊香 | 春 春風は2句物(春風1、春の風1)、吹物 かずらはつる草の総称で草類、橋は水辺体 |
99 7 | 咲き満つる神代の花のめでたさに 如月 | 春 花 神祇 |
100 8 | 日のあたたかく鶯の声 朝姫 | 春 鶯は1句物、鳥類 日は光物 |