電脳千句第8 賦何垣百韻 進行表 2018.1.7〜

1折表     
001         1   梅開くいまひとたびを連ね歌       千草  春 木類(梅は5句物、只1、紅梅1、冬木1、青梅1、紅葉1) ひとたびは数字
002          2   春告鳥の初音きく頃            如月  春 鳥類(鶯=異名は春告鳥は1句物
003          3   あさぼらけ霞む甍の波みえて      楽歳 春 あさぼらけは時分(朝) 霞は聳物 甍は居所体 
004          4  足の向くままたどる坂道          遊香 雑 人体 
005          5  おのづから謡ひいでたる杜若       夢梯  夏 杜若は1句物 草類 水辺 謡曲のタイトルでもある
006          6 ひんがしの空うちながめつゝ        蘭舎  雑 空は天象
007          7  月よみの大臣静かにうなだれて     梢風  秋 月 光物 夜分 人倫
008          8  あたゝめ酒を振舞ひにけり         羽衣 秋 飲食 
1折裏     
009          1  かげろふを見つつ盃さしいだし     路花 秋 虫類 飲食
010          2  訪ふものはただ秋の風         朝姫 秋 吹物 秋の風は2句物秋の風1、秋風1)
011          3  もののふの夢のあとなる関の扉に   如月  雑 人倫 夢と夢は7句隔てる この夢は非夜分 関は4句物(只1、名所1、恋1、春秋をとむると云いて) 関戸は居所ではないが、居所との打越を嫌う
012          4   海は鏡のごとくかがやく         千草   雑 海は2句物(只1、名所1、わたつみなどは別)水辺体
013          5  いさぎよく船出のときと告げたきを  遊香  雑 船は水辺体用外
014          6   妃と誇り奪ひかへさむ          楽歳  雑 人倫
015          7  いたはしや千と一つの夜を泣きて    蘭舎  雑 恋 数字 夜分 
016          8  枕にこめし思ひさまざま          夢梯  雑 恋 夜分
017          9   襲(かさね)たる花のくれなゐ綻ぶも  羽衣   春 花 襲は衣類
018         10  筆持つ庭にあは雪ぞふる        梢風  春 降物 庭は2句物(只1、庭訓など1)居所用。 淡雪は連歌で冬、俳諧で春。ここは例外として春。 
019        11 

 深山へと蝶の誘ふ道ゆかば    朝姫

春 虫類 山類体
020        12    ふと懐かしき鄙歌の節        路花  雑 述懐(懐旧) 鄙は国郡
021        13   潮干珠潮満珠の月涼し        千草  夏 月 光物 夜分 涼しは2句物(『連歌新式』は夏1、その他1、『産衣』は夏1、秋1)。夏の月ということで。
022        14   泥絵ゆらして宵宮の灯の       如月  夏 神祇 夜分
 2折表    
023          1   おどろおどろ陸奥のねぷたの浮かび出で
                       楽歳
 秋 ねぷたは秋の行事 国郡 
024          2   などて真直(まなほ)に狐花生(お)ふ 遊香  秋 草類(狐花は俳諧秋の季語「曼珠沙華」のこと)
025          3   人住まぬ家に佇めば鶉なく       夢梯   秋 鶉は鳥類 居所体 人倫 
026          4  野分のあとのひとすぢの雲       蘭舎   秋 野分は吹物 聳物 「ひとすぢ」で数字
027          5  かははらに流れしものを見てゐたり   梢風   雑 水辺体
028          6  ただ朽ちぬるも定めなるらむ      羽衣  雑 述懐(哀傷) 
029          7 

されどわが胸に寄りくる子のありて  路花

 雑 人倫 人体 
030          8   まなこの映す小さきまことに      朝姫  雑 眼は人体
031          9   星屑の陸に墜ちつつ空を恋ひ    如月  雑 光物 天象 夜分
032         10   はるけくしのぶ隼の旅         千草  冬 鳥類 旅 
033         11   山守の足どり残す霜の道      遊香  冬 霜は降物 山守は人倫・山類 足どりは足の字があるので、人体の語と打越を嫌うかも。
034         12   薪あたまになに語り行く        楽歳  雑 薪は燃料なので非木類 頭は人体
035         13   月の舟ほのかに傾ぐ夕まぐれ    蘭舎  秋 月 光物 時分(夕)
036         14   荻のささやく野は末枯れて      夢梯  秋 「荻」は3句物(只1、夏・冬に1.焼原に1)草類 荻のささやきは荻の声と同類で、風に2句 野は地儀
 2折裏    
037         1   つまもまた衣うつ音きくならん    羽衣   秋 衣うつ(衣類)このあと砧は使用不可 恋 人倫 
038         2   旅にあらねど旅のこころを      梢風  雑 旅 旅の字は2句物(只1、旅衣など1)「旅」と「旅のこころ」で使い切り
039         3   棹さしてうつせみの世を渡りゆく  朝姫  雑 述懐 「うつせみの」は世にかかる枕詞、世は5句物只1、浮世・世間の間に1、恋の世1、前世1、後世1) 
040         4   ときに早瀬の浮きつ沈みつ     楽歳  雑 早瀬は水辺体
041         5   言の葉のことなる端のおもしろく  千草  雑 言の葉に歌は付け打越ともに嫌
042         6   かぎろふ辺り馬を追ひつつ      如月  春 陽炎(この現象を連歌でどの範疇に入れるか? 聳物?光物?) 馬は1句もの、獣類
043         7   思ふどち永きひと日を遊び慰ぐ    夢梯  春 永き日は遅き日ともども1句物 人倫
044         8   馴染みし里に花の舞ひ初め      蘭舎   春 花 木類 居所
045         9   旗の音混じりて風のおぼろなる    梢風  春 おぼろ 風(吹物)
046         10   御(み)しるしなきもとぶらひて候    羽衣  雑 釈教 述懐(哀傷)
047         11   僧ひとり荒野の冬の月の道      楽歳    冬 月 光物 夜分 釈教 人倫 数字 地儀
048         12   打ち棄てし名の口惜しき夜      朝姫  雑 夜分
049         13   白湯そそぐ器に深き藍のいろ      遊香  雑
050         14   まつさととあるしもうさの邑(むら)   千草  雑 地名 国郡 居所
3折表     
051         1   真間の井に汲めるをとめご嫋やかに 如月  夏 恋 真間の井は泉と同義語、水辺体 人倫 
052         2   木下闇にますらをの待つ        夢梯  夏 木下闇は木類、非夜分 人倫 
053         3   みやまぢは雨にやならむ風のいろ   蘭舎  雑 山類 降物 吹物
054         4   鳴きながらゆくからす三つ四つ    梢風  雑 鳥類 数字
055         5   神垣に祝詞あがればつゝがなく    羽衣  雑 神祇
056         6   祠に初穂奉る秋             楽歳  秋 神祇
057         7   蔦紅葉人は知らねど色映えて     朝姫  秋 紅葉は3句物(只1、梅桜などに1草紅葉1)蔦だけでも秋季 つる植物には植物学上草と木の性質をもつものがあるが、連歌では『連珠合璧集』が草類に分類 人倫
058         8   何処へ止まるやとんばうの翅     遊香   秋 虫類
059         9   いつのまに涙にむせぶまろき月   千草  秋 月 光物 夜分
060         10   仄かに揺れて詩となるらむ       如月  雑
061         11  浜風に塩やく煙たなびきて      夢梯  雑 吹物 浜は水辺体 塩は3句物(只1、焼1、潮1)水辺用 聳物 
062         12 日暮近づき募るこひしさ       蘭舎 雑 恋 夕時分
063        13   世にあらば幾年のちの逢瀬あれ 梢風 雑 恋 世は5句物(只1、浮世・世間の間に1、恋の世1、前世1、後世1)。この句の場合は「只1」
064        14   折り目正しく結ぶたまづさ       羽衣   雑
3折裏     
065         1   防人は霞める空を仰ぎ見て      楽歳  春 霞は聳物 空は天象、防人は人倫
066         2   ふる里思ひ春の野に立つ        朝姫  春 「ふるさと」は2句物(名所や故郷で1、旅に1) 居所
067         3   あふれ咲く花の枝より鳥の声    遊香  春 花 木類 鳥類
068         4   つばいもちひの届くうららか     千草  春 食物
069         5   朝市に積まれし絵皿いとゆかし    如月  雑 時分(朝) 朝風、朝霜などの朝字は懐紙を替えて4句物
070         6   目閉ぢ目を開け居眠れる猫      夢梯  雑 猫は獣類
071         7   前うしろ山あるむらの冬ごもり     蘭舎  冬 山類体
072         8   帰らざるもの雪のながめに      梢風  冬 雪は降物
073         9   うつくしきひと夜の月の物語      羽衣   秋 月 光物 夜分
074         10   君待つ宿に萩は乱れて        楽歳  秋 萩は草類(『連珠合璧集』) 恋 居所体 
075         11   文を書く手をとめて聞く虫の声    朝姫  秋 恋 文は3句物(恋1、旅1、文学1) 虫は1句物
076         12   吊るし柿にも艶のありしや      遊香  秋 柿 吊るし柿は食物
077         13  閼伽桶に汲みいれし水さらさらと   千草  雑 釈教 水辺用 
078         14  石佛たち語る竹山            如月  雑 釈教 「竹山」が普通名詞で竹の生えている山の意味なら、山類体・竹は草類、草木に2句隔てる 
 4折表    
079         1   古き壺ひとつ掘りあて抱きゆく     夢梯  雑 ひとつは数字
080         2   野には朝陽の静やかに射し      蘭舎  雑 地儀 朝陽(朝風などこの類の「朝」は懐紙を替えて4句物) 陽は光物 時分(朝)
081         3   くたかけの声の力をうれしとも     梢風  雑 鳥類 
082         4   筆にこめたるたましひのいろ     羽衣  雑
083         5   海越えて流さるる今日濃き愁ひ   楽歳  雑 水辺体 人倫 
084         6   ゆるさぬことをゆるされてをり     朝姫  雑
085         7   冬枯れの枝を手折りて火にくぶる  遊香   冬 木類
086         8  毛衣を縫ふ刀自が鄙歌         千草   冬 毛衣は羽毛や動物の毛皮で作った衣裳。人倫。
087         9   山がつの垣訪ふものは風ばかり   如月  雑 人倫 「垣・垣ほ」は2句物、居所 吹物
088        10   季(とき)の移ろひ空に問ひかけ    夢梯  雑 空は4句物 天象
089        11   井に汲める若水に月鎮もりて     蘭舎  春 月 光物 夜分 井と若水で水辺の体と用 
090        12   春の一字を掛けしやはらぎ    梢風  春 数字
091        13   あはれにもをかしき種を蒔くこゝろ   羽衣   春
092        14   熊野鴉の鳴かぬ日はなし       楽歳  雑 神祇・鳥類(熊野鴉) 
4折裏     
093         1   ぜえぜえと荒るる喉を宥めつつ   朝姫  雑 人体
094         2   遠く聞こゆる飴売りの声        遊香  雑 人倫
095         3   静けさのきはみの底の忘れ河    千草  雑 わすれ河は非水辺、記憶の淵の近縁
096         4   伏せし想ひのときにせきあげ     如月  雑 恋
097         5   ながらへし者こそあはれ徒野に   夢梯   雑 述懐 人倫 地名
098         6   すゞろに綴る方丈の日記(にき)  蘭舎  雑 方丈は居所 維摩居士の故事により釈教
099         7   璞(あらたま)」の言葉を磨く花の朝  梢風  春 花 朝は2句物(あさ1、けさ1)
100         8   ひかり放ちてのぼる若鮎       羽衣  春 魚類 水辺用