狂 歌



大歩危閑散人作



2004年初夏、失意の民主党・菅直人遍路に出る


失速しなに思った菅お遍路へメディアを供に同行ふたり

ご利益は四国の票の掘り起こし山門ごとに人垣ができ

帰りたやこの人気もって永田町うしろ姿のしぐる間もなし
 

2005年夏

 

固唾呑む荒神山に血煙かりりし鉢巻腰に竹光

 

あけぬれば崩るるものと知りながら大宮人が夢の浮橋

 

これはまた宴会帰り珍客かされどもここは別のお座敷

 

鬱陶しや六道輪廻澱みおり気散じがてら衣替えせむ

 

兵児帯の端をつかんで待てしばしふり切ろうにも下はゆるふん

 

沿う鳴門壱岐にも走る帆かけ舟渦々観ず潮の変わり目

 

はすかいの日曜大工は知らざらんトンチン鼻唄オーフロインデ

 

瀬はしぶき労組にせかされしぶしぶと乞われて末に会うもやむなし

 

猿山に酒天童子の現れて酒酌みあいて尻まで染まる

 

千歳かけ江戸の夢から京さめて難波鞆あれ関門くぐらん

 

目に青葉てっぺんかけたかほととぎすたった一声あとは森閑

 

あだし野に陽は落ち風は蕭蕭と烏一声入相の鐘

 

あだし野に入相の鐘流れきて烏ひと声風は蕭蕭

 

あだし野に渡り烏の舞い降りて何をあさるか入相の鐘

 

あだし野に入相の鐘蕭蕭とこれも定めか一蓮托生

 

ぬるま湯につかり続けて半世紀お湯は冷めたが出るに出られず

 

背をまるめ時流もきかずひきこもりアカルンペンと人はよぶなり

(アカルンペン=academic lumpenproletariat)

 

 

 

 

       44回総選挙が2005年8月30日公示される。投票日は9月11日。内輪もめの村落社会型の自民党と烏合(都合)の衆の寄り合い民主党の2大政党の決戦とかいわれている。しかし、いまひとつ観戦気分が盛りあがらないのは、ケチな話題はあるが、本格的な争点が隠されているところに原因がある。

 

 

七重八重屁理屈こきあい山吹のみのひとつだに出ぬふんづまり

 

恋すみて髪逆立てて獅子吼する一寸先の闇の断崖

 

濃い墨の餅を絵に描き空也とは食えぬお方よそれは雪舟

 

組長にさかずき返した一揆衆鉄砲玉の影におびえる

 

越後なる山姥退治の刺客殿洋行帰りでドスよりもメス

 

越後なる山姥退治の刺客には藪の中から薬師選らばる

 

村芝居刺客くのいち不惑過ぎ乙女の姿もはやとどめず

 

くのいちがトランスに入りカーリー神だんびら片手へそ踊りする

               

 

●2006年8月

小泉君を送る

権力の座につくには決定的瞬間にたまたま至近距離に位置していたという幸運が必要だ。森喜朗氏の場合がいい例だ。自民党をぶっ壊すといって自民党総裁・日本国首相になった小泉純一郎氏の場合、彼の気質とあのときの国民の気分がうまく共鳴して推力を得た。毎度のことながら、こんども、日本国首相になるには、知性も叡智も必要なさそうだね。

座布団の飛び交う中の靖国で一人相撲の土俵入とは

総理やめお暇ができたあかつきは朝昼夕とどうぞおはこび

政治家が意地を張るのも手管なり聞いてみたいなその腹のうち

君の名を女人が呼びし純ちゃんの黄色い声もいまや色褪せ

あらかたの芝居にもれず幕引けて悔やまれるのは木戸銭のこと

海図なく勘が頼りの日本丸あげくに君の勘違いとは



●2006年9月

安倍君を迎える

来年の参院選までだ。短い期間だが、何もしないでいてくれ。


いずれとる椅子は垂涎待ちしかどきのう今日とは思わざりしを          安倍朝臣
青二才宰相と咲けるこの国は氏にて光る門閥の朝                 大歩危閑散人

散ればこそ英霊靖国いとしけれ日本の恥部は戦後にこそあれ          安倍
安倍君にそんな教育授けたは学校でなく家の責任                 閑散人

国破る前の凛たる日本丸私悲願の美しい国                     安倍
妖怪が手招きをする向こう岸なろうことなら渡し降りたい               閑散人




20061230日 サダム・フセイン処刑


テレビから

夜明け前縄に素っ首突き出して油地獄でいづれまみえん

一旦は地下に潜りし身なれども宙に浮かんでこの世お別れ

おれなどはあやつとくらべ小悪党軒の干物となりて朽ち果つ

一滴の油に飢えたやから来て身は吊るされて露と熱砂へ

あらぶるは神の定むるところかな藪から棒に足ぞすくわる



――2007年――


●2007年2月、たるんだ閣僚を幹事長が叱る

安倍晋三首相が閣議で入室したときに起立できない、私語を慎めない政治家は美しい国づくり内閣にふさわしくない。閣僚、官僚のスタッフには首相に対して絶対的な忠誠、自己犠牲の精神が求められる。首相の当選回数や、かつて仲良しグループだったかどうかは関係ない(中川秀直自民党幹事長、2007218日、仙台市の講演で)

 

幼君といえども血筋確かなり御前であるぞと爺はかんかん


2007年9月の狂歌 大歩危寒山人

へっついにけむこそみえね陽は落ちて人なき里に秋は来にけ


 

2007年9月吉日、安倍君を送る   

安倍川に溺れにけりないたずらに岸のあやかしながめせしまに

ボクちゃんが登りつめたる権力の坂の上なる朝顔の露

 

同じころ、日の本のあすを思いて

雪月花春夏秋冬順送り朱に染まって日輪沈む

 

 

2007年9月下旬、自民党の後継総裁就任を祝う」

安倍川にあきは来にけり平河の彼岸にばらまく福田餅かな

根太もまた緩んでいるがとりあえず屋根を葺き替えたてなおしとは




祝・福田内閣支持率5割超

雲間より出でし月影つかのまにあとは闇夜のアフガンの沖




●2007年9月、ビルマの僧侶の民主化要求デモを見て 

外つ国の僧は列なし覆鉢すさらばわれもと東京の空





●少し涼しくなりました

闇汁や森羅万象ふつふつと煮えたぎりをる秋の静けさ  寒山



●10月下旬、前の兵部大輔守屋某、十三夜に詠める

風しきり肩もおとして落魄の夜さむ身にしむ関門の月



●守屋某なげいて詠める

役人の道こそ険し接待に漬かれど礼もできず食い逃げ   寒山人



●連立めぐる福田・小沢会談の怪

かんなづき翁のふたりひき籠もりなにごそつかすたそがれのころ    寒山人


そのあとで
ちゃぶ台をひっくり返してふくれ面いっちゃんなだめる秋ぞわびしき  寒山人



●防衛省を取り巻く政官業の癒着構造の一角が見えてきたという思いだ(鳩山由紀夫・民主党幹事長)

公金を寄ってたかって食い散らしそれでもたらずどう消費税



●堺の病院職員が盲目の入院患者を大阪の公園に置き去りに

病院が病人捨てる悲曲かな低く流れる節は楢山