電脳千句第5  賦青何連歌百韻  進行表

001 1表1  篳篥のゆらぐ音色や梅雨に入る             夢梯      夏 梅雨に入る 梅雨(うめのあめ)は2句もの(梅雨1、五月雨1) 梅雨は降物 降物と降物は3句隔てる       
002   2    泉殿にはあはき人かげ                   楽歳 夏 泉殿。泉殿は居所体・水辺体。人影は人倫。人倫は打越を嫌う
003   3    集ふともなくかたがたの集ひ来て             千草  雑 人倫
004   4    籠に鳴かせる鳥のめづらか                梢風  雑 鳥類、鳥と鳥は5句、鳥と虫、鳥と獣は3句隔てる
005   5    けふが日も森から森へたそがれぬ            蘭舎  雑 けふは2句もの、「けふが日」は「けふ」に同じ。森は地儀。たそがれは時分(夕刻)、同時分の打越を嫌う
006   6    ひとり静かに茶をたててゐる                遊香  雑 ひとり(一人)は数詞 茶は食物 
007   7   雲はらふ風のまのまの月の影                楽歳  秋 月 夜分 雲は聳物(聳物と聳物は3句隔てる) 風は吹物(吹物と吹物は5隔てる)
008   8   閉せる門に荻のささやき                   夢梯 秋 荻は草類 草と草は5句、草と木は3句隔てる。荻は3句もの(只1、夏冬の間に1、荻焼原1))門は居所体、居所と居所は5句隔てる  居所は3句まで続けることができる
1折裏     
009   1   ふりむけば佛さやかに立ちたまふ              梢風 秋 さやか 釈教
010   2   おん手の魚篭にいをのいろいろ               千草  雑 人体 いをは魚類・水辺用(水辺は3句まで続けてよい。そのあと水辺と水辺は5句隔てる)
011   3   水の音たどる歩みのほそぼそと              遊香  雑 水は水辺用
012   4   我が恋ふるひと小野のわたりに              蘭舎  雑 恋 人倫(人倫と人倫は打越を嫌う)小野は野原のことで地儀
013   5   ひつそりときぬぎぬすぎて眉を刷く             路花 雑 恋 きぬぎぬは夜分 。 眉は人体
014   6   結べど消ゆる里の初霜                    楽歳  冬 霜は降物 降物と降物は3句隔てる。 里は居所体
015   7   冬の蝶物思ふがに静もれる                 夢梯  冬 蝶は虫類 
016   8   みやび忘れし鄙のいくとせ                  羽衣  雑 述懐
017   9   ゆくすゑもすぎにしかたも水のごと             千草  雑 述懐・哀傷 水は水辺用。
018   10   起き直る日の山の紫                     梢風 雑 「日」が光物か日次の日。山類体
019  11   たゞ月を花のあはひに眺めんと               蘭舎 春 花 木類 月 光物 夜分 
020  12   里の宴に香る白酒                     遊香 春 白酒は飲食物 里は居所体 
021  13   のどけくも民のかまどはけぶり立ち           楽歳 春 のどけしは春 民は人倫 かまどは非居所 けぶりは聳物
022  14   歌よみの文枕辺におき                   路花 雑 人倫(歌よみ) 文は3句もの(恋1、旅1、文学1。この句の場合、おそらく文学の文か) 枕は夜分(病床のケースもあり。解釈は次の付け句しだい) 
2折表     
023   1   永らふる命の涯の物狂ひ                羽衣  雑 命は2句もの
024   2   問へど応へぬ鳥ぞ悲しき                  夢梯  雑 鳥類
025   3   しみじみと山家に弦の響く夜               楽歳  雑 夜分 山類と居所のそれぞれ体 
026   4   梓弓はるもののふの影                  千草  雑 神祇(梓弓はシャーマンの道具) もののふは人倫
027   5   流されし身にいくたびの雪ぞふる             梢風  冬 降物(雪) 人倫(身)
028   6   隠岐の水草を枯らすよこかぜ               蘭舎  冬 草枯れは冬 国郡 草類・水辺用(水草) 風は吹物
029   7   冬ごもりするものありや岩の洞             遊香  冬 地儀(岩)
030   8   訳さまざまに奥駈道を                   楽歳  雑 旅
031   9   脚萎えの人に連れそふ童子ゐて            路花 雑 身体 人倫 
032  10   御衣(おんぞ)の薫りゆかしくもあり           羽衣 雑 衣類 
033  11  訶梨勒のひも鮮かに真木柱             夢梯 雑 居所(柱) 訶梨勒は室町時代に始まった座敷の柱飾 
034  12   しづのおだまきめぐりくる秋                楽歳  秋 
035  13   ため息に露けき袖を後の月                千草  秋  月 ため息・露けき袖で恋 露は降物 袖は衣類 夜分 
036  14   戻らぬ猫を思ふやや寒                   梢風  秋 獣類
2折裏     
037    1  絶え絶えに野寺の鐘のとほき道             蘭舎  雑 野寺は釈教 鐘は4句もの(只1、釈教1、入相1、異名1) ここの鐘は釈教 野は地儀
038   2   転ぶ小石のいつか止まりて                 遊香  雑 石は地儀
039   3   うつせみの浮名のはてのこけの塚            楽歳  雑 恋 述懐(無常) 苔は草類
040   4   京の出会ひを思ひ出づる日                路花  雑 出会ひは恋 思ひ出づるは述懐(懐旧) 京は国郡 日次の日と月次の月は打越を嫌う
041   5   ほとゝぎす夢のつづきの有りやなし           羽衣  夏 ほととぎすは鳥類で1座1句もの 夢と夢は7句隔てる 恋 夜分 
042   6   文目もわかぬ雨のみぞ降る               夢梯  雑 雨は降物、一座1句もの 
043   7   塞の神置かれし岸に波寄せて              如月  雑 塞の神は道祖神のことで神祇 岸は3句もの只1、名所1、彼岸1)で水辺体、波は水辺用
044   8   うかれめの手のいと細げなる               千草  雑 うかれめは人倫 手は人体 
045   9   琵琶に依り睡れることのあまたたび           梢風  雑 夜分
046  10   鄙にも月はしろう光りて                  蘭舎 秋 月 光物 夜分 国郡 
047  11   蟋蟀のゑんりょながらにかはす声           遊香  秋 虫類 
048  12   よしなしごとを秋のつれづれ               楽歳  秋
049  13   のどらかに頤の髯すこし伸び               路花 春 おとがいは人体 
050  14   形見なるらむかの桜狩り                 羽衣 春 桜は木類 
3折表     
051   1   醍醐なる仏の教へ清明に                夢梯  春 清明は二十四節季の一つで、春3月の節。釈教 醍醐寺はいまでは世界遺産の名所
052   2   遙か御空にあふぐ塔(あららぎ)            如月  雑 空は天象
053   3   さびしさに呼べどつれなきみやこどり          千草  雑 鳥類
054   4   にほひゆかしくひらく巻紙                梢風  雑 
055   5   逢ふことも今はかなはぬ君をこそ           蘭舎  雑 恋 人倫
056   6   声おちこちに忘れやはする               遊香  雑 恋
057   7 睦言のよみがへりくるしののめに            楽歳  雑 恋 しののめ(東雲)は時分(朝)または夜分
058   8  うつろふことを知らす冬霧                 路花  冬 霧は聳物  
059   9  神無月つはもの一人逸れしむ              羽衣   冬 人倫
060  10   国の境を越えて帰らず                  夢梯 雑 旅 国郡  
061  11   横笛の嗚咽幽かに築地うち               如月  雑 築地は居所
062  12   ししかくまかと老のしはぶき              千草  雑 獣類 人倫 老は2句もの只1、鳥木など1))この「老」は非懐旧。 
063  13   しぐるれば如何にと翌のもみぢ狩          梢風  秋 時雨は2句もの秋1、冬1) もみぢは3句もの只1、梅・桜などに1、草の紅葉1)木類 翌は「あす」=明日。
064  14   寝覚めがちなる奥山の秋               楽歳  秋 夜分 山類
3折裏     
065   1   事なしぶ髪をけづりて朝月夜             遊香  秋 月 朝月夜は夜分・光物 恋 髪は身体
066   2   恋に浮かるるころは過ぎても             楽歳  雑 恋 
067   3   鄙なれば手向けの花も探しかね           路花  春 花 鄙は地儀 手向けは神祇・釈教
068   4   首途(かどで)をかざる鶯の声              羽衣  春 旅 鶯は鳥類で一座1句もの 
069   5   たび人も愁ひも春の風のなか             夢梯  春 旅 人倫 吹物(春風は2句もの、春風1、春の風1
070   6   いにしへ想ひめぐる八橋                 如月 いにひへ(古)は1句もの。述懐・懐旧 八橋は名所で水辺用 、同時に橋は5句もの(只1、御階1、梯1、名所1浮橋1、ここの橋は名所)
071   7   さらはれていくかに空の白雲の            千草  雑 天象 聳物
072   8   牛も来て飲むつくばひの水               梢風 雑 獣類 つくばひ・水ともに水辺用  
073   9   あな尊とひかりこぼせる柿若葉             蘭舎   夏 柿の若葉は木の若葉で、連歌では夏、木類 光は日光で光物
074  10   絵扇ごしに影をうかがひ                遊香 夏 絵扇は俳諧では夏の季語、連歌では無季の場合が多い 
075  11   殿ばらが裾ひるがへす鞠の庭             楽歳 雑 人倫(殿ばら) 裾(衣類)  庭は居所用にして2句もの只1、庭訓など1)
076  12   三人集へばはしたなき声               路花  雑 人倫 数詞  
077  13  思ふとも思ひのほかの通せん坊             羽衣  雑 恋
078  14   頼みをかくるかささぎの羽                夢梯  秋 恋 かささぎ(鳥類)は七夕のデートのおぜんだて役
 4折表    
079   1   徒臥の髪つくよみにかがよへり              如月  秋 月 夜分 人体(髪) 恋(徒臥=あだぶし)
080   2   真葛が原の風しのびやか                 千草  秋 草類 地儀 吹物
081   3  いつよりか社に赤き領巾の鳴る              梢風  雑 神祇 領巾は衣裳の類 
082   4   そばへに濡るゝ市のひとむら               蘭舎  雑 降物(そばへは天気雨) ひとむらは「一群」
083   5   盃をさしあふ人のさらぬかほ                遊香  雑 人倫 人体
084   6  凪ぐる海路に夏の日は落ち                 楽歳  夏 旅 水辺 光物
085   7   舳にていづこ眺むる白き鳥                 路花 雑 水辺用 鳥類 
086   8   生き死にあまた見やり過ぐして               羽衣  雑 述懐
087   9   蓮の骨うつろふ時世かなしとぞ              夢梯  冬 蓮の骨は草類 世は5句もの(只1、浮世・世の中の間に1、恋の世1、前世1、後世1) 哀傷は述懐のうち
088  10   時雨心地にあはき墨の香                  如月 冬 時雨は降物(時雨は2句もの、秋・冬各1、秋の時雨は3折表13で既出。これで時雨は使い切り) 
089  11   しのばるるあまつをとめの駿河舞             千草 雑 恋 人倫 
090  12   挿頭(かざし)は風のたはむれを知り            梢風  雑 恋 風は吹物
091  13   かけはしの上なる雲のたちはなれ             蘭舎 雑 かけはしは5句もの(只1、御階1、梯1、名所1、浮橋1。ここのかけはしは架け橋で只の橋) 雲は聳物。句意から見て、山奥の谷間の架け橋のようなので、非水辺。 
092  14   山なみだけは昨夜(きぞ)の如くに             遊香  雑 山類 夜分
 4折裏    
093   1   奥処(おくか)よりながれ落ちたる花の波         如月  春 花 木類  
094   2   舟人(ふなびと)去りし櫓にとまる蝶           羽衣  春 舟人は水辺用・人倫 櫓は水辺用 蝶は虫類
095   3   かげろふを追ひて夢へと誘はれ               草馬  春 かげろふは聳物
096   4   戦なき星祈る月影                       夢梯  雑 月 星 光物 夜分
097   5   故里は色鳥わたるころならん                蘭舎  秋 鳥類 居所
098   6   急ぐ旅路のこの秋の暮                    楽歳  秋 旅 秋の暮は晩秋の意で時節
099   7  われも又をのこのすなるつらね歌               梢風  雑 人倫
100   8   茶を点て語るほがらかなこゑ                 遊香  雑 茶は中国渡来、音読みで「チャ」、訓読みでも「ちゃ」