賦何木連歌百韻 (電脳網千句巻4) 進行表
001 一表 1 | 待つほどに深山も花のさかりかな 楽歳 | 春 花 木類 山類 |
002 2 | 霞をわけて春の旅人 千草 | 春 霞は聳物 旅人で旅・人倫(旅の字は厳格には只1、旅衣など1、の2句物だが、肖柏のころからさほど厳格でなくなった) |
003 3 | かたらひの長閑になれる船路に 梢風 | 春 旅 船は水辺体用外 |
004 4 | 風のすがたの見ゆる川上 蘭舎 | 雑 吹物 川は水辺体 |
005 5 | 月影を砕くさゞ波音もなく 夢梯 | 秋 月 光物 夜分 波は水辺用 |
006 6 | すすきの露をこぼすまつむし 楽歳 |
秋 すすき、露、まつむしの三品取り揃え。ススキは草類で3句物(只1、尾花1、すくろ・ほやなど1) 虫は虫類で3句物(只1、まつむし1、すずむし1) 露は降物 |
007 7 | やや寒に炊ぎの煙ほの青く 千草 | 秋 聳物 色(青) |
008 8 | 子の声さはに山裾の秋 梢風 | 秋 山類 人倫 |
初折裏 | ||
009 ウ 1 | ひのくれは里のけはひもやはらかく 蘭舎 | 雑 時分 居所 |
010 2 | 途切れがちなる木魚洩れくる 夢梯 | 雑 釈教(木魚) |
011 3 | 五月雨の堂降り籠むる |
夏・降物(五月雨は1句物。別に梅雨1 懐紙をかえて) 釈教(堂) 地名 |
012 4 | はなたちばなの香るたまづさ 千草 | 夏 たちばな(木類、橘は1句物) |
013 5 | 忘らるること忘れ得ぬもの千々に 梢風 | 雑 数字(千々) |
014 6 | またねの枕なほも恨みつ 蘭舎 | 雑 恋 又寝は後朝あと又寝ることで夜分(きぬぎぬも枕も) |
015 7 | 生き霊となりて繋がむこの先は 夢梯 | 雑 生霊は一座一句物 |
016 8 | こがね争ひおくれとりたり 楽歳 | 雑 |
017 9 | つぎなるはかの燕の子安貝 千草 | 春 燕の子安貝の燕を季にした |
018 10 | 霞より現れいづる白船 梢風 | 春 霞は聳物 白船(唐船)は水辺体用外 |
019 11 | むかしはといふ身の春の暮れそめて 蘭舎 | 春 むかしは一座一句もの 述懐 この身は人倫 |
020 12 | さしかけられし傘のうれしさ 夢梯 | 雑 |
021 13 | 月今宵あひみる人の美しき 千草 | 秋 月 恋 夜分 人倫 |
022 14 | かひなにつつむ手枕の秋 楽歳 | 秋 恋 身体(かひな) 夜分(手枕) |
二折表 | ||
023 1 | 携へて辿る野末の露しとど 夢梯 | 秋 露は降物 地儀(野) 手を携えているのだから恋 |
024 2 | こゆべき山に鹿ぞ鳴くなる 蘭舎 | 秋 鹿は3句物(只1、鹿子1、すかる1) 山類 獣類 |
025 3 | しづのをの学ぶこころの尊けれ 梢風 | 雑 人倫 |
026 4 | ふでかみすずり墨の清らか 千草 | 雑 |
027 5 | ゆゑありて船を送るとふみの来て 楽歳 | 雑 水辺体用外(船) ふみ(文)は3句物(恋1、旅1、文学1) |
028 6 | つはものつかさ額をあつめる 夢梯 | 雑 人倫 |
029 7 | 吹きむすぶ月影しろき枯野中 蘭舎 | 冬 月 光物 夜分 地儀 |
030 8 | 風におされて鷹のあゆめる 梢風 | 冬 鳥類 吹物 |
031 9 | うたびとの心ほがらにありぬべし 千草 | 雑 人倫 |
032 10 | のどけき空のまためぐり来ぬ 楽歳 | 春 天象 |
033 11 | 何処へか雲間をよぎり竜の影 夢梯 | 春(竜天に昇る) 聳物(雲) 竜は一座一句物 |
034 12 | 国の蛙は戦はじめる 蘭舎 | 春 虫類・水辺用(蛙) 国郡 |
035 13 | 盗まれてぬすみ返せし花の池 梢風 | 春 花 水辺体 (池) |
036 14 | たはむれの画を描く僧正 千草 | 雑 釈教 人倫 |
二折裏 | ||
037 1 | 経読むは歌も連歌もあきたゆゑ 楽歳 | 雑 釈教 |
038 2 | 気儘な旅に立出づる夢 夢梯 | 雑 旅 夜分 |
039 3 | 朝焼に遠きみやこをまた思ふ 蘭舎 | 夏 みやこは3句物(只1、名所に1、旅に1) 遠き都は旅の都 |
040 4 | 水の匂ひの夏をのせくる 梢風 | 夏 水は水辺用 |
041 5 | 行く川のわが笹舟のあやふげに 千草 | 雑 川は水辺体 笹舟は小さい船で水辺体用外。子どもの笹の葉舟であれば草類・水辺体用外 |
042 6 | きみぞたよりと離さじの袖 夢梯 | 雑 恋 人倫 衣類 |
043 7 | 恋はみな峰にさかるるちぎれ雲 楽歳 | 雑 恋 山類(峰) 聳物(雲) |
044 8 | 奥のしぐれを何と見るらむ 梢風 | 冬 しぐれ(降物)は2句物(秋・冬各1) |
045 9 | 関の戸は尋ねまほしき白河の 蘭舎 | 雑 関の戸の「関」は4句物(只1、名所1、恋1、春秋をとむると云いて1)。白河の関で名所 |
046 10 | 牧もおぼろにはなれ駒見ゆ 千草 | 春(おぼろ) 獣類(駒) |
047 11 | ふはふはと絮を飛ばして鼓草 夢梯 | 春 鼓草の絮(草類) |
048 12 | 筆はすすまず永き日も暮れ 楽歳 | 春 時分(永き日も暮れ) |
049 13 | たたなびく霞の中にうかぶ月 梢風 | 春 霞は聳物 月 光物 夜分 |
050 14 | たゞほのかなる空木(うつほぎ)の影 蘭舎 | 雑 木類 |
三折表 | ||
051 1 | 鐘の音数ふるうちのうたた寝に 千草 | 雑 鐘は4句物(只1、入相1、釈教1、異名1、この鐘は只の鐘) |
052 2 | 心の緒ろのやがて解けゆく 夢梯 | 雑 |
053 3 | ひさびさに山のいで湯のほととぎす 楽歳 | 夏 ほととぎすは鳥類・一座一句物 |
054 4 | ひと雨あれば田を植うる日に 梢風 | 夏 田植え 降物(雨) |
055 5 | 物縫ひて結び忘れし糸の尻 蘭舎 | 雑 |
056 6 | やごとなき名をいただきし猫 千草 | 雑 獣類 |
057 7 | たまゆらの出会ひに胸の高鳴りて 夢梯 | 雑 恋 人体(胸) |
058 8 | やがて二道かくる今様 楽歳 | 雑 恋 二道かくる 数詞 |
059 9 | 言の葉に吹く風裏と表見せ 梢風 | 雑 言の葉・詞で2句物、残り1 吹物 風と風は5句隔てる |
060 10 | よきもあしきも霧にまぎれて 蘭舎 | 秋 霧は聳物 |
061 11 | 真葛原うねりの果に灯の幽か 夢梯 | 秋 葛は草類 灯は3句物(只1、釣りの灯1、法の灯1)にして夜分 真葛原は地儀 |
062 12 | 月と鼓とこころ一つに 梢風 | 秋 月 夜分 数詞 |
063 13 | 古の聖をしのぶ柱にも 千草 | 雑 懐旧・述懐 古(いにしえ)は1句物 聖は非人倫(『産衣』) 柱は居所 |
064 14 | 我にかへれば霜のおとなひ 蘭舎 | 冬 降物 人倫 |
三折裏 | ||
065 1 | 明くる夜の鶏の凍れる声をきく 楽歳 | 冬(凍れる) 明くる夜は時分 鳥類 |
066 2 | 茜の空に何を祈らむ 夢梯 | 雑 空は天象 茜の空は時分(朝あるいは夕) |
067 3 | きたへたる玉の鋼を研ぎあげて 梢風 | 雑 玉の字は4句物 |
068 4 | ふつのみたまの太刀ぞ畏し 千草 | 雑 神祇(ふつのみたま) |
069 5 | 富士に添ふ浦はいづれもかたちよく 蘭舎 | 雑 富士は山類(富士、浅間、葛城などは山類体用の外なるべし、と新 式にあり)にして名所 浦は水辺体 |
070 6 | 松の緑に煙ひとすじ 楽歳 | 雑 木類 聳物 ひとすじは数詞 松の緑は俳諧で春、連歌で雑 |
071 7 | 野点する釣釜の声風の声 夢梯 | 春 釣釜 風は吹物 |
072 8 | いらへのどかに尼たちのゑみ 梢風 | 春 のどか 釈教(尼) |
073 9 | 近衛には八重に七重に花車 千草 | 春 花 数詞 近衛は非居所 |
074 10 | にほひいたらぬ里はあらじと 蘭舎 | 雑 居所(里 |
075 11 | 秋しぐれ丘の錦をかけおりる 楽歳 | 秋 降物(秋時雨 時雨は秋冬2句物 冬時雨は2裏8で使用。時雨はこれで使い切り) 山類(丘) |
076 12 | 日々細りゆく蟋蟀の声 夢梯 | 秋 蟋蟀(虫類) |
077 13 | 満ち欠けの不思議を月に問うており 梢風 | 秋 月 光物 夜分 |
078 14 | 父母知らず十七となり 千草 | 雑 人倫 数詞 |
四折表 | ||
079 1 | 常夏のはつかに匂ふ比翼塚 蘭舎 | 夏 草類(常夏) 恋(比翼塚) |
080 2 | ひとへぎぬにも移り香のこく 楽歳 | 夏 衣類(ひとへぎぬ) 恋(移り香) |
081 3 | 声低きものをこはがること久し 梢風 | 雑 |
082 4 | とぼそを叩くかぜの暮れ方 楽歳 | 雑 とぼそ(樞)は1句物で居所体 時分(暮れ方) 吹物 |
083 5 | 旅立ちの訳を猫にもねんごろに 千草 | 雑 旅 獣類(猫) |
084 6 | けふはきのふのあだし身にして 蘭舎 | 雑 懐旧・述懐 けふ(今日)は2句物 きのふ(昨日)は1句物 |
085 7 | 流れゆき変りゆく世々飛鳥川 夢梯 | 雑 飛鳥川は水辺体・名所 述懐 世々の「世」は4句物(只1、浮世・世中で1、恋の世、前世、後世各1) |
086 8 | いを捕りながら後生いのらめ 梢風 | 雑 魚類 水辺用 後生は釈教 後生はのちのよ(後世)と同意。漢語の後生は「こうせい」 |
087 9 | 夕霧のはれゆく彼方月ありて 楽歳 | 秋 月 光物 時分 霧は聳物 夕の字は懐紙をかえて4句もの |
088 10 | 願ひの糸の紅のひとすぢ 千草 | 秋 願いの糸は七夕関連 赤い糸は恋 ひとすぢは数詞 |
089 11 | 逢ひ見てののちのまことか思ひ草 蘭舎 | 秋 恋 草類 「思ひ草」は和歌のころから恋の句の小道具 |
090 12 | 茶の香残れるをだまきの盌 夢梯 | 雑 恋 |
091 13 | 鳥声に似たる翁のうとまれて 梢風 | 雑 人倫 鳥類? |
092 14 | 涸れた泥田で蓮根掘る日々 楽歳 | 冬 レンコンは草類 |
名残り裏 | ||
093 1 | 曼荼羅のかたじけなさを伏し拝み 千草 | 雑 釈教 |
094 2 | しきみの枝の香にむせびつゝ 蘭舎 | 雑 しきみは釈教・木類 シキミは葉(雑)にも花(春)にも香があるが、シキミの香りといえば葉の方がより一般的 |
095 3 | ひとつ鐘峡にひびかせ彼岸へと 夢梯 | 雑 ここの鐘は4句物中釈教の鐘。 峡(はざま)は山類 |
096 4 | 水の清らを映す朝日に 梢風 | 雑 水は水辺用 朝日は光物(朝日、朝風などの朝の字は4句物) |
097 5 | 泉よりせせらぎ早瀬やがて海 楽歳 | 雑 水辺体 海は2句もの(只1 名所1) |
098 6 | たなごころより飛びたてるてふ 千草 | 春 虫類 人体 |
099 7 | ふり返り見れば一村花の雪 蘭舎 | 春 花 居所 数詞 |
100 8 | 吹き抜けるのみ春惜しむ風 夢梯 | 春 風は吹物 |