飛込み歌仙「シナモンの」

自: 201912.9

                              至: 2020.1.22

 

 

  シナモンのグリューヴァインや君を待つ     柳下

   揺れる灯影の恋のシュトレン         まんだら

  市役所のからくり時計鳴り初めて         柳

   尖塔の先雲は流れる                ら

  緑茶飲む煙突掃除のマイスター          柳

   ここは天上月もけむたげ              ら

  桐一葉三千世界秋が来た              ら

   四十七士は朝鈴を聞き               柳

  入り組んだ意味の迷路を抜けきれず        ら

   白き鯨の挑む海底                 柳

  蒼穹ニ昇レバ則チ龍トナル              ら

   デモの上着を脱いで花見に            柳

  不都合な春は御苑の門を閉じ           ら

   急に集まる聞香の友                柳

  逸品をクリスティーズで競りかった         ら

   月と蛇踏むマリア立像              柳

   ボサノバにのってビキニが浜を行く             ら

      水風船のぽんぽん弾け                    

二オ

  中世の町をぐるりと囲む壁               柳

     火あぶりもあり八つ裂きもあり           ら

  日曜は竹葉亭のうな重を                柳

   自腹切りすぎ背負う借金              ら

  秋空を飛ぶ絨毯に医者と娘と             柳

   玄月なかば病めるスルタン               ら

  竪琴の青き十六夜閨に落ち               柳

   溺れるままにうたかたの夢               ら

  志ん朝と小さんの子ぼめ聞こえ来る          柳

   扇を閉じてしばし逡巡                 ら

  オソルノにドロップアウトして暮らそ           柳

   山の麓の古い酒蔵                    ら

名ウ

  ふるさとの花おもわせて春の軒             ら

   朧の中を挨拶に寄り                  柳 

  茶摘女が籠を背負った昼下がり            ら

   新興企業持ち主を変え                柳 

  キャピタルにものをいわせるお振舞           ら

   ひと抱えある冬菊を切る               柳